僕が子供の頃

僕は子供の頃、大人になったら、パイロットになると思っていた。
僕は子供の頃、自分に子供が出来るとは思っていなかった。
今、僕はしがないサラリーマンというやつで、毎日決まった会社に出勤して、毎日決まったルートで家に帰ってくる。
今、僕には奥さんがいて、来年の春には僕は父親になる。
僕は子供の頃、今の僕のような暮らしを、想像しただろうか。
子供の頃の僕は、今の僕みたいな暮らしを、どう思うんだろうか。


僕はパイロットにはなれなかった。いや、いつからか、パイロットになろうとも思わなくなっていた。
僕は気がついたら結婚していた。結婚した時には、僕の奥さんになった人のお腹の中には、僕の子供がいた。
そのどちらも、きっと子供の頃の僕には想像もつかないような話だろうし、誰かがこっそり教えてくれても、きっと信じなかっただろう。
子供の頃の僕は、今の僕を見て怒るだろうか。それとも、落胆するのだろうか。
でも、僕は僕に言ってやりたい。


確かに平凡で、ドラマティックではないし、子供の頃の僕がガッカリするような展開かもしれないけれど、これはこれで悪くないよ、って。
人が聞けば、妥協や諦観から出た言葉だと受け取られるかもしれない。
もちろん、違った人生もあったかもしれないと思うし、子供の頃の僕が描いた道とは随分違っている。
けれど、僕なら、きっとわかるはずだ。
僕が今、生まれてくる子供と、これからの生活を考えると、少しの不安と共にある種の感情を抱いていることを。
それは僕が子供の頃、パイロットになることを夢見ていた時とは少し違った感情だけれど、それでも僕は、あの頃と同じように、ワクワクする。


この前の話に続いて

更に別な友人も来年出産予定らしい。
なんか今年は、身近な人が死んだり産んだりと、色々あった年だなぁ。