庭(テリトリー)意識

はてなブックマークコメントにはPermalinkもidコールもあるのに、なぜ「反論するコストが高い・面倒」と思えるのがとても不思議なので、その根拠を教えてほしい


「教えてほしい」とのことなので、「はてなブックマークに反論するのはコストが高い・面倒と思っている人」の気持ちを想像して、だらだらと書いてみる。
ただ先に言っておくと、「なんかキモイから嫌」とか「勝手に一言書かれるのが嫌」という、感情論レベルの話は、otsune氏も求めていないだろうし、僕もそういう話をするのは不本意なので、省く。
余談だが、この「感情的反発」が最も大きい勢力な気はするけど。要するに「なんかはてなキモイ!」「はてなブックマークとかされるとキショイ!」というのと同レベルの意見*1

ウチとソト

詳しくは民俗学的話を解説している本でも読んで貰うとして、古来より日本人にはウチとソトという感覚があって〜(以下略)。
というわけで、はてなブックマークを利用していない人にとって、「自分のブログ」はウチで、「はてなブックマークのページ」はソトなのである。
と、これだけだと結局感情論やんけと言われそうだが、ブログを書いている人にとって自分のブログとは「自分が利用申し込みをして利用しているサービス」であり、自分が自発的に利用している、自覚的に利用しているサービスである*2。対してはてなブックマークというのは、自分がはてなを利用しているかどうかに関わらず、自分が利用申請せずとも勝手に自分のページに対しブックマークを付けられ、勝手にブコメされるというサービスだ。
これは、被ブックマーク者がはてなの存在を知っているか否か、はてなブックマークというサービスについての知識を持っているか否かとは、全く別な問題である。
はてブについて知らないから嫌なだけで、自分もはてブコメで反論すればええだけやん」という話が出て来がちだが、そういう問題ではないのだ。


要するに問題は、能動的か受動的かの差で、「自分が利用申請して使用しているサービス」と「自分は利用申請してないのに勝手に自分のブログが組み込まれている(かのような感じの)サービス」との差である。
ISPにサーバスペースを与えられて、そこを自分の領土のような感覚でサイトを作るように、ブログサービスも利用者にとっては「自分のブログ・自分の領土」なのである。


自分は庭付き一戸建てを買って、ガーデニングを始めたが、庭品評会に参加申し込みした記憶はない、みたいな感じだ。
オマケにこの品評会、ご丁寧にも品評会会員は庭を見た瞬間、その庭にどういう採点が寄せられているかの一覧が見られるようなシステムになっているのだ。
こりゃもう家主としては、「なんか勝手にウチの庭に点数貼られてる」ような感じなわけである。

トラックバック・コメントとの違い

otsune氏は、「はてブは一種のミニblogみたいな物」と述べているが、そう捉えると一見「はてブコメ付けられること」と「トラックバックされること」に違いは無いように感じる。どちらも、自分のブログではない、「ソト」に自分のブログに対する意見を書かれるという点では同じだ。
対してはてブコメとブログへのコメントの違いは簡単で、はてブコメは「ソト」に書かれるのに対し、コメントは「ウチ」に書かれるという明確な差がある(ここでのウチ・ソトは、被コメントブログユーザー側から見て)。
ブログにコメントを付けるということは、相手の「ウチ」に入ってコメントを書く行為であり、いわば相手のテリトリー内に入るということである。対してはてブコメは、相手のテリトリー内に入らず、あくまで「はてなブックマーク」というサービスの中で完結する行為だ。


で、改めて「はてブコメ」と「トラックバック」について考えると、これは「はてブコメ」と「コメント」の違いと同じように、問題はウチかソトかの差に起因するんじゃないかと思う。
大抵のブログサービスには、トラックバック受け付ける・受け付けないの設定がある。まずこの時点で「トラックバック」というのはブログユーザのある程度の支配下にある。
その上で、トラックバックされると自分のブログの記事に、トラックバックされたことを示す表示が出たりリンクが貼られたりされる。ブログユーザ自身の「自分のブログの世界内から目に届く範囲」で見えるのだ。要するに、コメントほどではないにせよ「ウチ」に食い込むのである。


詰まる所問題は、「どれだけ自分の支配下にあるか(自分のブログから直接見える範囲にあるか)」であり、少なくともデフォルトで「はてブ」へのリンクやら「はてブuser数」が出ないようなブログからは、「はてブ」は「ソト」なのである。

別にはてブだけの問題じゃない。けど

で、ここまでの話をまとめると、要するに「ウチ(自分のブログ内)」での反論・意見と、「ソト(自分のブログから直接見えない場所)」での反論・意見は違う! ってことになる*3
でも、この「ソトでの発言」って別にはてブに限らない話ではある。


たとえば2chネットウォッチ板のような場所で、特定のブログの特定のエントリについての意見交換がされていたら、それは対象ブログユーザーからすると「ソトでの意見」である。
また、トラックバックを送らずに特定のブログの特定のエントリについて、延々語るのも、対象ブログユーザーからすると「ソトでの意見」である。
要するに言及された側に、言及されたことが明示されないのが問題であって、そこが「反論のしにくさ」に繋がっているのだと思う。


で、ここで僕が気になるのが、以前書いた「はてブユーザーの強制力」である。
はてブは確かに便利なサービスだ。僕は猫型人間なので、自分のブックマーク(嗜好)を公開するなんて嫌だから、ユーザーではないけれど、ネットサーフィンを便利にしてくれるサービスであることには間違いない。
が、便利でユーザーが多い故か、ユーザー側に「みんな使っていて・見ていて当然」という感じが見受けられる時がある。
前述した、2chネットウォッチ板の例や、トラックバックを送らずに語る等の行為では、「被言及側がここでの意見交換を見ていて当然」などと思う人は少ないだろう。
だがはてブでは何故か、「被ブクマ側も、このはてブコメを見ていて当然」というような風潮を感じる。
これは、はてブが他の例に比べ、対象のウェブページと密接(にはてブユーザーには見える)であるからだと思う。
被ブクマページと一対一の関係で、はてブ側にもPermalinkが存在し、そこにコメントが付けられる様子は、あたかも対象ページとその裏ページのような関係だと錯覚してしまいがちだ。実際は対象ページとはてブのページとは、全く別なサーバに存在する別なサービスのページなのにも関わらず。
この錯覚が、はてブユーザー・被ブクマユーザー双方に起こりやすいのが、はてブコメントに対するネガティブな意見が出る最大の理由ではないかと思う。


と、まぁここまで書いてきて、結局「はてブコメに対して反論するのはコストが高い」という部分は僕自身全く理解できていないし共感出来ないので補足出来ていないわけだが、もう片方の「はてブコメに対して反論するのは面倒」というのは、はてブコメに限ったことじゃなく、「ソトでの意見に対して一々意見拾ってきて反論するのは面倒」ということで一応理解出来るのではないかなぁと思う。


コストに関しては、別にはてなに登録しなくても反論は出来るし、Permalinkが存在して誰でも閲覧出来る時点で、はてブコメに反論するという行為は、非はてなユーザーから見ても「登録ユーザー以外コメント不可能のブログへの反論」とかと変わらない程度のコストで反論出来るよなぁ。
ああ、でもこれって、「コメントを受け付けていない・トラックバック受け付けていないブログへの反論」と同じで、「ソト」でしか反論出来ないわけだ。
そう考えると、「ソトでの反論・意見」が嫌で、はてブコメ嫌がる非はてなユーザーにとって、はてブコメへの反論自体が「ソトでの反論・意見」になってしまうというジレンマが生じるわけで、凄いもどかしいだろうなぁ。


要するに対象が読む確率の問題というか、対象のテリトリー内(ウチ)に入って意見を述べないと、対象に伝わる可能性が低いわけで。
はてなユーザーが自分のブログのエントリに対し、はてブコメ付けられて、それに反論したいとする。
その場合、対象ユーザーへのIDコールも出来ないし、対象ユーザーがダイアリーも書いてなくて、プロフィールにもメールアドレスが公開されてなかったら、自分のブログに追記として反論書いても読んで貰えるかどうかわからないし、確実に読んで貰う方法が無いよね。
そういう所が、「コストが高い」なのかなぁと思った。


でも往々にしてはてブユーザーは、はてブ自体が万人共通の「ウチ」だと思ってるから、ブコメ付ける時にそういう「読んで貰えない可能性」みたいな物を余り考慮していないように感じる。

追記

上に書いてある、

要するに対象が読む確率の問題というか、対象のテリトリー内(ウチ)に入って意見を述べないと、対象に伝わる可能性が低いわけで。

について補足。
物凄く分かり難い文章で申し訳ないが、ここで言う「対象」とは、「反論コメントを寄越した人」だけでなく、「その反論コメントを読んだ人」も含んでいる。むしろそっちの方が比重が大きい。


「クソッ、よそのブログで勝手に俺様の記事引用して、文句つけてやがる! 俺の反論を読みやがれ!」
って意識は勿論として、
「クソッ、よそのブログで(略)文句つけてやがる! この文句読んだ人が誤解しちゃう! 俺の反論読んで貰って、俺の方が正しいってわかって貰わなきゃ!」
ってのがデカイと思うわけです。


で、相手のブログにコメント欄があれば、そこに乗り込んでコメントして、ガチバトルを演じることで「ほら、俺間違ってないよ!」ってのを観衆(文句を読んだ人達)にアピール出来るわけですが、はてブコメントの場合、(はてなに登録してはてブしないと)それが出来ない、と。
ま、結局閉じてる開いてる、ウチ・ソトの話ですわ。

*1:もちろんそれはそれでアリだし、個人の好き嫌いを僕がどうこう言う立場ではないのだが、再三述べているように「好きか嫌いか」というのはどこまでいっても個人の嗜好であり、それがマジョリティだったとしてもあくまで嗜好の合う人が多いというだけの話で、その主張自体の正当性をなんら保証する物ではない。

*2:知らない間に夢遊病的にブログ書いてるような人は別にして

*3:トラックバックはウチではないけれどウチから完全に見えないソトではない、お隣さんみたいな感じ