iPadがいい意味で期待外れだった件について

日本時間1月28日午前3時から開催されていた、appleの新製品発表イベント。
iTablet、あるいはiSlateと呼ばれる、appleタブレットネットブック登場か!? と言われていたわけだが、見事に予想を外した製品が登場した。
少し太って健康的になった? ジョブス*1が発表したのは、iPad
これはネットブックというよりは、完全にiPod touch及びiPhoneの延長の製品。
iPadのプロモ動画
http://www.apple.com/ipad/ipad-video/


価格

  16GB 32GB 64GB
Wi-Fi 499ドル 599ドル 699ドル
Wi-Fi+3G 629ドル 729ドル 829ドル

iPadの方向性

最初に僕の感想を言っておくと、この指向は正しいと思う。今回のiPadが商業的に成功するかどうかとは別に。
というのも、ライトユーザーを取り込むには、WindowsMac共に「複雑過ぎる」のだ。CPUにAtomを積んで、WindowsXPを搭載したネットブックも、当然PCであり、ライト層を取り込むような「家電」に近い物ではない。
その点、iPhoneiPod touchPCMacに比べて遙かに簡単である。
アプリケーションのインストールから使用まで、自由度はPCMacと比較して遙かに低いが、自由度が低い故に、一貫した操作で簡単な物となっている。*2
現状、ネットブックは、所詮「性能の低い・安いノートパソコン」でしかない。
iPhoneを使うようになってノートパソコンをあまり持ち歩かなくなった、というような人には、今回のiPadはかなり良い製品だろう。
また、今まであまりパソコンを使っていなかった、複雑過ぎて使うのをやめた層にも、良いと思う。

iPadで何をするか

一方で、「こんなの出ても使い道わからんわ」という声も聞こえる。
おそらくそれは、「Macネットブック」を期待していたからで、「iPhoneiPod touchの大きい奴」だと思えば、色々な使い道が想定出来るのではないかと思う。
発表でもあったように、MacBookiPhoneiPod touchとの間を埋める製品だが、どちらかと言えばやはりiPhoneiPod touchに近い。
ソフトウェアキーボードにしても、iPhoneでは画面が小さくてqwertyキーはイマイチ使い勝手が悪かったのだが、iPadのサイズなら十分に使い物になるだろう。
アプリケーションにしても、解像度が上がったことや、iWorks for iPadにより、iPhoneより遙かに使い勝手が良くなることが容易に予想できる。


簡単に言ってしまえば、画面のサイズやスペックが向上したiPhoneiPod touchでしかないとも言える。
でもそれだけで、iPhoneiPod touchを使っていた人にとっては「ああ、今まで不便に感じていたあの部分を埋められる!」と想像出来る。
個人的に、Flashに対応しないのは、やっぱり致命的というか、ネット閲覧だけを考えても大きなデメリットだよなぁ、と思うが。

電子ブックの時代が来る! といいなぁ

iPodが普及し、iTunesが普及したことで、パソコンでiTunesを起動して、iTunes storeで音楽を買う、というのが当たり前になった。
バイスに入れるコンテンツを、ネット経由で買うことが一般化した、と言える。
次にiPhoneiPod touchが出て、パソコンなしに、iPhoneiPod touchというデバイスのみでコンテンツを買うことが出来るようになった。
今回のiPadも、その延長線上である。
iPod touch青空文庫リーダーなどのアプリを入れて使ってみるとわかるが、やはり画面のサイズが小さい。
というか、最低限、文庫本を開いた時と同程度のサイズがないと、読みづらい。
Kindleもそうだけれど、電子ブックを読むには、9.7インチサイズのディスプレイというのが妥協できるラインなんだと思う。


で、その電子ブックだけど、もう当たり前のように日本は置いてきぼりになっているわけで。
iPodが普及したことで、音楽業界が重い腰を上げなければならなかったように、iPadの普及で、出版業界も変わるといいなぁ、と思う。

まぁ多分買わないけど

iPadにしてもiPhoneにしても、基本的にはコンテンツを利用するためのデバイスであって、コンテンツを作成するためのデバイスではない。
iWorkのおかげで、多少は仕事や作業に使える物になるだろうけれど、やっぱり「本腰入れて仕事に使うならノートパソコン使え」となるわけである。

  • 外ではノートパソコン必須って程の作業はしない
  • でもiPhoneiPod touchではちょっと力不足を感じてる
  • だから仕方なくノートパソコンも持ち歩いてる

こんな人にはぴったりだろうけれど、「メインで使ってるパソコンに近い環境を外で使いたい」という人にとっては、iPadは選択肢に入らないのである。


で、屋内使い・屋外使い共に考えても、やはりiPadはパソコンではないという結論になる。当たり前だが。
iPadは、パソコンでもない、携帯でもない、ネットを見られる第三のデバイスとして捉えるのが、一番いいんじゃないかなぁ、と思う。
で、携帯よりも色々出来て、パソコンよりも簡単な、まさに隙間を埋める物としての立ち位置。

iPadがどの程度普及するのか

iPadは、確実にパソコンよりは身近に使えるだろうし、iPadが普及すればよりネットが身近な物になるだろう。
ユビキタスにより一歩近づいたのは、事実だと思う。
買わないけど、頑張って欲しいと思う。
PSPNintendoDSのように、みんながごく当たり前に使える・使ってるデバイスになると、もっと世の中面白くなるんじゃないだろうか。


たとえば、大学でiPadを持ち歩くのが当たり前になって、みんなが紙のノートではなくiPadを使って、講義も資料やビデオが手元のiPadに送られてくる、とか、想像しただけでワクワクである。

余談。AT&Tの料金プランが素晴らしい

iPadの話ではなく、AT&Tの料金の話になるが、同時に発表された、AT&TiPad向けデータ通信プランが素晴らしい。
この低価格は、おそらくiPhoneでのデータ通信の実績や、iPadのサイズを考えて、3G通信よりWi-Fiでの通信がメインになると考えての価格設定なのだろうか。
データ通信、月250MBまでで14.99ドル。
250MB以上はデータ転送料無制限で29.99ドル。
更にAT&TWi-Fiホットスポットが無料利用可能。


多分買わないとか言ったけど、日本で出る時にこの位の価格で利用できたら、買っちゃう。
3G通信で29.99ドルで無制限って、日本だったら国内最安値じゃないか。
でも、日本ではこの価格ではデータ通信させてくれる会社ないだろうなぁ……。

*1:新製品にあまり興味はなくとも、健康的になったジョブスが見られただけで満足した人は多いと思う

*2:JailBrakeすれば自由度は上がるが、当然複雑になる。自由度と簡単さというのはいつだってトレードオフ