コクリコ坂とアリエッティとゲドの感想

夏にコクリコ坂を見たので、忘れないうちに書いておく。

ゲド戦記

ひどいひどいと言われているけど、作画はそこまでひどくない。
ただ、ジブリの最大の見所である、アニメーションとしての動きに関しては不満。駿や高畑勲の動かし方を期待してると、がっかり。
リアル志向というかなんというか。動きの特徴を捉えて、その一点をオーバーに描くことで、逆にダイナミックにリアリティを感じさせる、アニメらしい手法をとってきたこれまでのジブリに対して、動き全体をとらえて矛盾ないように、写実的にアニメーションにしてるだけ、みたいな。
音楽、作画以外は見所皆無。脚本とか構成とか、アホかと。鈴木敏夫が前面に出てきたらダメなんだと改めて感じた作品。
っていうか原作ファンは怒っていい。
作品テーマ自体が不明。動く絵と音だけ楽しむものだと割り切りましょう。


物語論的に見ると、主人公の成長が全く感じられないし(一応剣を抜いたりなんだりで《成長した》ことにはされてるけど)、匂わせたテーマはただ匂わせただけで何ら話に関与しないし、超駄作。
っていうか監督より脚本家の問題じゃね?

借り暮らしのアリエッティ

良かったと言われているけど、良いとは思わない。
作画は美しいけれど、もろデジタル丸わかりで、昔の多摩地区だとかトトロみたいな自然描写を期待すると肩すかし。
動きも、綺麗ではあるんだけど、メイの動きの方が遙かに生き生きしてる。
動きに血が通ってないとか表現すれば良いのか。そしてキャラクターとしても血が通ってないからどうしようもない。
音楽が象徴するように、ただただ人工的な、純粋培養された美しさを見る映画。
作品テーマ自体が不明。やっぱり綺麗な動く絵と音だけ楽しむものだと割り切りましょう。
ただ、一枚絵の美しさはアリエッティの方が上だけど、動きだけ見たらゲドの方がマシだろ。


っていうか、とりあえず植物出しておけば自然みたいなのはどうなのよ。駿はそこに生えてる木々とか草花とかに対する知識があって、この季節この場所ならこういうのが生えてるとか考えて描いてるわけで。
なんとなくで、生えるわけない場所に生えるわけない雑草描いてみたり、そんな感じ。
植物に限らず、一時が万事。
箱庭というか、人間から家から庭から全てが、ただの絵なんだよなぁ。


物語論的に見ると、主人公は一応成長したんだろうけれど、その成長のきっかけが謎だし、そもそもアリエッティ達は何も成長していない。
一夏の出会いと別れの話とするなら、変なテーマ入れようとせず、ただ出会って別れるだけで十分。
っていうか監督より脚本家の問題じゃね?

コクリコ坂から

良かったと言われているけど、良いとは思わない。
ゲドとはまた違った意味で駄作。
ゲドの時の説明不足は継承。最初の設定から主人公のあだ名から、カルチェラタンの話から、何から何まで説明不足。
言葉での説明不足と言うより、話の中で描写が無い。突然出てくるだけなので、そこに感情移入も何もない。ただ「そうなんだ」と思うだけ。
旗も、恋愛も、カルチェラタンも、船も、海も、両親も、全てに必然性がない。それでいて全てにテーマっぽいことを持たせて、深そうにはしているから、分散しまくって見所スカスカ状態。
やりたかったことは理解できるのだが、どれもきちんと出来てない。


絵としてはゲドやアリエッティより上だし、アニメーションとして見たとき、ゲドの欠点は改善されているんだけれど、相変わらず構成や話は駄作。


っていうか監督より脚本家の問題じゃね?


駿が脚本やるなら、駿が監督やらないとダメなんだってことがよくわかる作品。
っていうか駿が脚本入った時点で恐れ多くて、丹羽さんはもちろん、監督含む他のスタッフも好き勝手出来ないでしょ。