乙女衝動

純愛を求める男性が三次元の女性に絶望して二次元に流れるという、逆昇華とでもいうような行為を、多少は理解できる気がする。
所謂二次元逃避型喪男である(逃避という言葉を彼らは嫌がるだろうが)。
お姫様を迎えに来る白馬の王子様といったシチュエーションに憧れるのは女の子だけではないし、女の子に特別な時期があるように、男の子にだって特別な時期があるわけである。
しかし大抵は現実的な問題の前にそれを忘れたり諦めたりして、極普通の恋愛をして極普通の結婚をしたりするわけだが、一部に幻想を捨てられないまま現実とのギャップに苦しみ、漫画家になったりする人が現れるのだろう。
(決して全ての少女漫画家がそうだと言っているのではなく、高橋留美子的な例に関して言っている)
お姫様に憧れ続けた少女は、白馬の王子様を待ち続け、いつしか白馬の王子様がいない事に気づき、現実に戻るか幻想の中で生き続けるかの選択を迫られる。
歳を重ねる毎に自らも理想としたお姫様からは離れ、更に現実が重く圧し掛かってくる。
自らがお姫様足り得ない(幸運にも容姿その他の面で恵まれお姫様となるケースもあるが)という事実に気づいた少女は、それでも白馬の王子様を待つか、現実を受け入れ妥協するかしかないのである。

だがこれは、女の子だけの問題ではない。
白馬の王子様になりたかった男の子だっているのである。
彼らもまた現実という強大な敵に襲われ、幻想を捨てるか、幻想の世界に生きるかを選択するのだ。
そしてその中で幻想を捨て切れなかったパターンの一部が、所謂二次元逃避型喪男なのだろう。

彼(彼女)らはある意味で非常に純粋だと思う。ファンタジーの体現者と言っても過言ではない。
彼らが満たされているかどうかとは別として、彼らは幻想に殉じているのだ。

もっとも、幻想に殉じる人間が増えすぎて生活に支障が出るようでは、社会的には問題なのだろうが。