非日常

初対面の人間と、探り合いながらも会話して、一緒にお酒を飲む。
こんな事をやる度に、奇妙な違和感を感じながらも落ち着き取り戻す。
 
次の瞬間、目の前にいる人が襲い掛かってくるかもしれないわけで。
お店で飲んでれば大丈夫?
捕まる事を恐れない人にとっては、何も関係ない。
 
忘れがちだけど、これって当たり前の事だと思う。
付き合ってた彼女の家に泊まりに行ったら、彼女がいきなり包丁持ち出して刺し殺そうとしてきた、みたいな。
 
もちろんこれを当たり前だとしてしまうと、僕が社会で生きていく上で大変な不都合を被ると思われるので、異常と分類わけして意識の外に追いやって生活しているわけだが。
 
「そんな人だと思わなかった」
何が?
たとえ10年一緒にいた人間だとしても、互いを分かり合う事なんて不可能だろう。
理由も無く人を殺したくなる事なんて、きっと誰にでもあるし、違いがあるとすれば、実際にやってしまうかどうかだけだと思う。
 
その些細な違いを、実際に行動してしまうかどうかの違いを見分ける事なんて、不可能だろう。
昨日まで一線を越えなかった人間が、今日、些細な、本当に些細な事をきっかけに一線を飛び越える事だってありえる。
 
今のところ、僕はまだボーダーのこっち側にいると思っている。そう自覚している。
でもこれは錯覚かもしれない。誰だってそうだと思う。
 
 
そんな事を考えると、奇妙な落ち着きを取り戻す。