風邪をひきながら

風邪をひきながら、『馬鹿は死ななければなおらない』『馬鹿は風邪をひかない』といったことについて考えていた。

馬鹿は風邪をひかないということから、風邪をひく人は馬鹿じゃないということがよく導かれるが、これは誤りではないのだろうか。
例えばA氏が二十歳の時点で風邪をひいたら、
 1.馬鹿は風邪をひかない
という事から風邪をひいている二十歳の時点でのA氏は馬鹿でない事が証明される。
そして、
 2.馬鹿は死ななければなおらない
という事から、A氏は二十歳の時点だけでなく、それまでも馬鹿ではなかった事が証明される。もし仮にA氏が十九歳の時点で馬鹿だったのならば、それは死ななければなおらないのであり、二十歳の時点でも馬鹿であるという事になり、馬鹿は風邪をひかないという1の条件と矛盾するのだ。

さて、では二十歳の時点でA氏が風邪をひいたからといって、二十一歳の現時点でのA氏は馬鹿ではないと言えるだろうか。
馬鹿ではないと推測することは出来る。だが、決して馬鹿では無いと証明は出来ないのだ。
前提条件としてあるのが
 1.馬鹿は風邪をひかない
 2..馬鹿は死ななければなおらない
という二つだけでは、風邪をひいた後馬鹿になる事はないという事が絶対ではない。
故に一度風邪をひいても、そのすぐ後に馬鹿になっている可能性もあるのだ。

そう考えると、我々は、現時点までの我々が馬鹿ではない事を証明する為に風邪をひく事は出来ても、その先も馬鹿にはならないという保障を得ることは出来ないのだ。
我々は風邪をひいている間だけ、それまでの自分と今の自分が馬鹿でない事を証明できるのであり、風邪をひいていない時の自分が馬鹿かどうかを判断する為に過去風邪をひいた例を出すのはナンセンスである。
もし貴方が馬鹿でない事を証明して死んでいきたいというのであれば、風邪をひきながら死んでいくことをお勧めする。

しかし、冷静に考えると、風邪をひきながらこんな事を延々と考えている自分が、一番馬鹿かもしれない。