出会うべき時

どこぞのソムリエの台詞になってしまうけれど、「人にもワインにも、出会うべき時というものがあるのです」というなら、「本にも出会うべき時というものがあるのです」と言えるだろう。
極端な話、全ての事に「出会うべき時」というものがあると言えるのだが。
何よりも重要なのはタイミングで、そして最良のタイミングで出会えることなんて滅多にないわけで。
先日、森博嗣の『探偵伯爵と僕』を読んだのだが、「子どもの頃にこれを読んで、成人してから再読したという形だったならば……」と少し悔しく感じた。そういう内容の本だった。
しかし、そう悲観した物ではないのかもしれない。
ピークを過ぎたワインにだって懐かしさに似た香りを感じられるように、遅すぎた出会いには遅すぎた出会いにしか感じられない何かがきっとあるし、早すぎた出会いもまた同様である。
ワインと違い、「いつ飲むべきか」がハッキリとわからないのだから、それが早すぎたと感じようが遅すぎたと感じようが、ただそれを楽しむしかないのだ。

悲観的なような、楽観的なような。