買い物

大抵の場合、買い物は買った後よりも買う前の方が楽しかったりする。
特に僕は小さい頃から買う前に悩むタイプだった。
たとえば欲しい玩具が二つあって、そのどちらを買うか迷った時、祖父・祖母は(既に死去しているが)大抵の場合二つとも買い与えてくれようとしたそうだ。
だが何故かそれが嫌だった。そんな時常に僕の口から出る言葉は「一つでいいの」だった。
一度に沢山貰ってしまうのが勿体無いと考えていたと思う。
もしここで一度に二つ貰ってしまったら、次回貰えないかもしれない。それならば、今回は一つで我慢しておき、次回より欲しいものが出来た時に貰った方が良い。
子供心ながらに、こう判断していたのだろう。
この傾向は今でもある。ただ、大抵の場合、頂き物を断ったからといって次回また貰える保障など無いという事に気がついて、極力その場で受け取る方を選ぶように努力しているが。
話が逸れた。買い物の話だ。
買い物をする際に、僕は今でも悩む。まずカタログを入手し、コストパフォーマンスを考慮し、デザインを比較し、実際品物に触れてみて使いやすさを吟味し、散々悩んだ上でようやく購入する。ただし、購入しない場合の方が遥かに多いのだが。
買ってしまったら取り返しがつかないと思っている。失敗だったから別なの買えばいいや、なんて簡単には割り切れない。だから慎重になる。
そしていずれ新製品が出たり、販売されなくなったりする。気持ちも風化していく。
そうやって、僕は何かが欲しかった事すら忘れていく。