自転車

二つの車輪で僕らそれに飛び込んだ
羽のように広がって 水しぶきがあがって
youthful days

自転車の季節。
知らない道を走って迷って、知らない場所に行って景色を見て、知らない坂を上って汗をかいて、知らない坂を下って転ぶ、そんな季節。
子どもの頃、初めて自転車に乗れた時の気持ちを、多分もう忘れてしまっている。
それは確かにほんの数年前まで僕の中にあった。地図を見ればこの川の水がどこから流れて来ているかなんてすぐわかるのに、自転車に乗って源泉まで遡ることが躊躇無く出来た、そんな気持ち。
自転車に乗って走る事がただ楽しくて、ついでに目的も作って日帰りの小冒険。
休みの日は冒険に出る日だったと思う。
迷ったら太陽を見て方角を知り、おおよその見当をつけて走り、日が暮れる中急いで家に向かい、ようやく知っている道に出たときの、あの安堵。

車やバイクに乗るようになって、行動範囲は大きく広がったけれど、自転車に乗っていた時の、あの気持ちを忘れてしまった気がする。
道を知り迷う事もなくなり、太陽が沈む中泣きじゃくりながら、線路沿いに最寄駅まで自転車を漕ぎ続けた、あの時のような気持ちは、多分もうない。

ただの郷愁に似た思いなのかもしれないけれど、また自転車に乗ってみようと思います。