ウェブアクセシビリティについてウダウダと

昨日sixapartとalfasadoのセミナーに行ってきたわけだが、アクセシビリティの話もあった。
で、純生さんのブログを見つつ話を聞いてたら、今日こんな催しがある模様。


公開討論会 "だれもが使えるウェブサイト"」
http://junnama.alfasado.net/online/2009/09/post_167.html
http://daremoga.jp/


要するにアクセシビリティについての話だと思うんだけど、「誰もが」ってのは難しいよなぁ、と思う。
実際には、視覚障害者等を考慮して「誰もが使える」の実現は可能でも、「誰もが満足して」というのは非常に難しいという意味で。


今は一時ほどではないと思うけど、依然存在するflashサイトにしても、利用者を限定したサイトだ。
で、問題はflashで作られたサイト自体にあるのではなく、サイト制作者、あるいはサイト制作を依頼するクライアントの意識の部分だったりするわけである。


例えばウェブサイトをフライヤーのように利用したいクライアントは、何よりもまず見た目を意識することがある。
「情報が伝わるかどうか」でなく、まず第一に見た目のインパクトで「情報を読む気にさせられるかどうか」に重きを置くわけだ。あるいはブランドイメージだったりなんだったりで、ビジュアル重視ってのは、よくあることで。
極論を言えば「このウェブデザインで感性にビビっと来る人にだけ見て欲しい。そうじゃないなら、別に見てくれなくて構わない」というスタンスである。そういう人にとっては、ハナから視覚障害者や色覚障害者は切り捨てられていたりするのだ。


これがマスメディアの場合、マスに伝える義務があるので、代替手段の用意が必須になる。特にニュースなどの場合、音声ニュースの他に文字・手話等を使用して全ての人に伝えられるようにしなければならない。
だがウェブサイトの場合、そこは完全にサイト管理者の判断に任されている。オールflashで、しかも音声ガイダンスが流れてそれを聞かないと閲覧出来ないようなサイトは、ハナから「flash見られなくて音声ガイダンスも聞けない環境の人には、見て貰わなくて結構です」と言っているのと同じだ。そしてそれは、そのサイトが公共的な物でないなら、(倫理的にどうかは別にして)責められることではないだろう。
つまるところ、客を選んで商売をしているようなものである。


なので、ウェブサイトを運営している側が、「自覚的に」客を選んでflashサイトやらアクセシビリティの低いサイトを作っている分には、問題ない(倫理的問題を抜きにして)と僕は思っている。
だが実際は、「自覚的に」アクセシビリティの低いサイトにしているのではなく、「ただなんとなく」「かっこいいから」でやってしまっているのが、現状ではないだろうか。
ここで最初の話に戻るわけだが、問題はサイト制作者、あるいはサイト制作を依頼するクライアントの意識の部分なのである。


サイト制作者は、大なり小なりアクセシビリティに対する意識は持っているだろう。というか、サイト制作会社などウェブサイト制作を仕事でやるなら、多少でもアクセシビリティを意識していないと、それはもうウソだ。
問題はクライアントおよび一般利用者で、「アクセシビリティ」という言葉も知らない、興味がない、そもそも何故flashサイトオンリーじゃダメなのかがわからない、という人が、世の中には多数存在する。
健常者が普通に生活していて、障害者等と接する機会があまりに少ないのも、原因の一つかも知れない。
とにかく、自分が見られる範囲で最高にカッコイイ物を求めてしまいがちなのだ。そして、それを見られない人がいるという所まで想像が至らない。


でもこれって、クライアントや一般利用者の問題だろうか?
少なくとも、一般利用者の問題ではない。健常者がテレビを見るときに、手話放送や文字放送を意識しないように、健常者がウェブを閲覧するときはおそらく何も意識しないのだ。
となると、情報発信側の問題となるわけだが、前述したマスメディアの問題と違って、ウェブサイトの場合、情報発信者は「素人」である。
上で挙げたような、最初から閲覧者を限定するということを自覚的にやっているケースは別にして、そうでない場合、「ただなんとなく」でアクセシビリティの低いサイトになってしまっているのだ。
とすると、そこにはある種の啓蒙が必要である。
それをするのは誰か? となったら、それはサイト制作側の人間だろう。
クライアントからの要求が、アクセシビリティの低下を招くような物だった場合、それが自覚した上での要求なのか、アクセシビリティという概念を全く意識してないでの要求なのかを確認し、アクセシビリティとは何かといった話から説明し、理解してもらう必要があるのではないだろうか。
それをしないことには、いつまで経っても「あーあ、アクセシビリティ低いサイトだなぁ」と思いながらサイト制作を続けるハメになる。そして「誰でも」ではなく「限定された人」しか使えないサイトが生まれるのだ。
それはおそらく、クライアントも望むことではないだろう。


もちろんアクセシビリティとデザイン性の両立は難しい。両方をやろうと思えば、それだけコストがかかる。
あるいは割り切って、flashサイトとhtmlサイト二つを用意するなどをやっても、当然コストがかかる。
だがそこで、「コストがかかるからやめる」のではなく、「なぜコストをかける必要があるのか(なぜアクセシビリティを意識する必要があるのか)」をクライアントに理解して貰い、その上で「やる・やらない」の判断をして貰うことが必要であると考える。


アクセシビリティの問題とは、なんのことはない、結局は全員がアクセシビリティに関しての意識を高めればそれだけで解決する問題なのである。
だが、それが何よりも難しい。
だからこそ、今少しでもアクセシビリティに関して意識を持っている人が、啓蒙していく必要があるのだ。


と、思いつくままに書いているけれど、この日記はデフォルトだと背景黒で「大変読みづらい」と評判なので、アクセシビリティは非常に低いと思います。
これは僕なりの、「ユーザースタイルシート使って好きに見てください」「RSSリーダーで直接読んでください」「そういうのがわからない人は、読みづらいまま読むか、あるいは読まなくていいです」という自覚的な行動と言えるわけである。
読みにくいサイトや、自分の感性と合わないサイトは、ガンガン自分にとって読みやすいように変えて読んでしまえばいいのだ。
そしてまた、それが出来るということを、サイト制作側は意識しておくべきだし、そうするのが一般的になれば、ウェブってのがどういう物かってのがもっと正しく認知されるのではないだろうか。
少なくとも僕は、レイアウト強制の為にオールflashでサイトを作るようなやり方は、ウェブにマッチしていないと考えている。